価値ある健康的な人生とは何か
先日、ヨガで肩関節を痛めて腕が挙がらなくなったという女性が来院されました。ヨガで体を壊すケースは決して珍しくはありません。健康の為に始めたヨガで健康を損ねるとは困ったものです・・・。抑もヨガとは、ヒンズー教の思想哲学を起源とし、自然の哲理を体得することを目指す厳しい苦行「ハタ・ヨーガ」や、日常生活に於けるあらゆる慈善行動を精神鍛錬の修行と位置付ける「カルマ・ヨーガ」など、様々な分野に於いて実践される修行法です。日本で古来から信仰されている禅宗の修行の一つ「座禅」も、ヨーガの影響を受けたとされています。
現在、日本各地のカルチャースクールなどでやたらと流行しているヨガは、本物のヨガからはかなり逸脱したもので、単にオリエンタルなポーズで強引なストレッチングをしているだけに過ぎません。いうなれば「ヨガらしきもの」或いは「ヨガ風ストレッチ」といったところでしょう。
私は日頃から皆さんへ適度なストレッチの重要性について申し上げておりますが、決して無理なストレッチを勧めている訳ではありません。ストレッチは、関節の可動域拡大を目的とした健康法であり、快痛(痛気持ちいい)程度の体勢保持が理想です。強引に関節を伸ばし、その痛みから開放された直後の爽快感をストレッチ効果だと勘違いされている方が殆どだと思いますが、ストレッチは一朝一夕に非ず、日々の継続あるのみです。無理のない程度に少しずつ開脚運動を毎朝晩実践すれば、1年もすれば股割りが可能になるでしょう。
週に1回程度のヨガもどきをやったところであまり意味はなく、還って体を壊しているようでは何の為のヨガなのか、本末転倒も甚だしい話です。本物のヨガ修行者であれば、まず体を壊すようなことはないでしょうし、例え壊したとしても、厳しい修行の成果として症状を修復するだけの知恵と回復力を兼備していることでしょう。
社会の情報化が加速し、巷にはあらゆる健康法や健康グッズ、健康食品、サプリメント、医薬品などが蔓延しているにも関わらず、何故それらの数に比例して「成人病」や「生活習慣病」などという訳の分からない数多の病気が増えているのでしょうか。ただ闇雲に平均寿命を伸ばすことのみが医療や医学技術の進歩の結果といえるのでしょうか。
斯く言う私も、高尿酸血症と診断され、薬を服用していた経緯があります。また、長年の格闘技生活の代償として、重度の腰椎椎間板ヘルニアを始め、様々な症状に悩まされ続けてもきました。今でも時々痛みを発症することがあります。しかし、現在は人間の偉大な回復力を知り、それを自らの生活に活かすべく意識改革をし、日々実践しております。おかしなサプリメントや薬などに頼ることなく、不要なものは摂取しないということを心掛けるだけで、充分健康になれるのです。
「健康の為に何かを摂取する」という考え方は、資本主義経済が生んだ罪過であります。それに惑わされることなく、「価値ある健康的な人生とは何か」ということを深く考えた上で、真偽を見極める目を養っていきたいものです。
2015年07月11日 05:40