腰痛今昔
我々人類は、二足歩行を始めた時から腰痛という宿命を背負うことになりました。それが証拠に、どの言語にも“腰痛”という言葉が存在します。腰痛のない人生ほど素晴らしいものはないといっても過言ではない程、腰痛とは辛いものです。ところで、昔の腰痛と現代の腰痛では、患部が同じ腰部であっても性質が全く異なります。昔の腰痛は、農作業や肉体労働などの重労働によるものが殆どでした。これは、腰へ負担を掛け過ぎたことによって起こるもので、動かし過ぎということです。一方、現代の腰痛の原因は、デスクワークなどで長時間椅子に座りっぱなしでいることや、長時間の車の運転などに起因するものが殆どです。つまり、動かさな過ぎということです。
昔の動かし過ぎによる腰痛であれば、休息を取ることによって症状は緩和されました。ところが、現代の動かさな過ぎによる腰痛は、いくら休息を取ってもなかなか改善されません。つまり、現代の腰痛は「動きながら治すしかない」ということです。
作業の効率化による労働環境の変化、正座の習慣が薄れてソファーに腰を掛ける機会が増えたこと、或いは運動量の激減、食生活の乱れ等々…あらゆる生活様式が著しく変化したことも、現代腰痛ともいうべき新たな腰痛を形成した原因となっていることは否めません。
私は「体力=健康」であると解釈しています。体力は一朝一夕で作られるものではありません。「体力=健康」は、日々の積み重ねでしか構築されません。痛くなってから慌てて運動しても、その時の腰痛には効果は反映されにくいでしょう。我が師は大変厳しい方で、日頃から「腰痛は甘えだ」と断言されていますが、自身の体を甘やかすことが腰痛に繋がるという意味では全くもって仰せの通りだと思います。私は、ショッピングモールなどへ出掛けた時は、よほど大きいものを買った時でない限り出来るだけ車を遠くへ駐車し、エスカレーターは使わず、階段を使うように心掛けています。運動を心掛けている訳ではなく、身体を甘やかさないことを心掛けています。
皮肉なことに、現代人は楽をしようとして還って腰痛に陥っています。しかし、それも二足歩行という「楽」を選択した人類の悲しき性なのでしょうか。
2015年06月05日 05:39